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人間ドックと健康診断の違い
2020/08/10
健康診断とは
健康診断(健診)は、将来の病気のリスクを確認することを主な目的とし、定期的に行うことが望ましい検査とされています。また、健診時には異常がなくても、健診を受けることで健康づくりに向けた行動につなげるねらいがあります。
健康診断は、労働安全衛生法に基づき、会社が従業員に対して年1回実施することが義務付けられています。また、従業員は、会社が実施する健診を受けることが義務付けられています。
その項目は次のとおりに定められています。
定期健診の項目
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長(※)、体重、腹囲(※)、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査(※) 及び喀痰検査(※)
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)(※)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)(※)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(※)
- 血糖検査(※)
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査(※)
※の項目については、定期健康診断では、それぞれの基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができます。
出典:「労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう ~労働者の健康確保のために~ 」P.2,厚生労働省
より一部改変して作成
2008年からは、40~74歳の被保険者・被扶養者全員を対象に、生活習慣病の予防を目的とした「特定健診」が行われています。特定健診では、メタボリックシンドロームに着目します。
特定健診の結果から、生活習慣病のリスクのある人に対して行うのが「特定保健指導」です。特定保健指導では、専門スタッフが生活習慣を改善するためのサポートをします。
特定検診には「基本的な項目」と「詳細な項目」があります。項目は、特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準(省令案)で定められています。40~74歳の被保険者・被扶養者「基本的な項目」は、虚血性心疾患や脳血管疾患などの危険因子や生活習慣病の重症化の進展を早期に発見するためのもので、この結果を受けて必要に応じて特定保健指導が行われます。
特定健診の基本的な項目
- 質問項目
- 身体計測(身長、体重、BMI、腹囲(内臓脂肪面積))
- 理学的所見(身体診察)
- 血圧測定
- 脂質検査(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロールまたはNon-HDLコレステロール)
- 肝機能検査(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP))
- 血糖検査(空腹時血糖またはHbA1c検査、やむを得ない場合には随時血糖)
- 尿検査(尿糖、尿蛋白)
出典:「標準的な健診・保健指導 プログラム 【平成 30 年度版】」P.2-2,厚生労働省
より一部改変して作成
「詳細な健診の項目」は、生活習慣病の重症化の進展を早期にチェックするためのもので、結果に応じて必要な場合は受診勧奨が行われます。
特定健診の詳細な健診の項目
- 心電図検査
- 眼底検査
- 貧血検査(ヘマトクリット値、血色素量及び赤血球数)
- 血清クレアチニン検査(eGFRによる腎機能の評価を含む)
出典:「特定健康診査・特定保健指導の円滑な 実施に向けた手引き(第3版)」P.5,厚生労働省
より一部改変して作成
人間ドックとは
人間ドックは、健康診断とは異なり、法律に基づかない自由診療の検査です。
さまざまな診察や検査により体の状態を総合的に評価し、できるだけ詳しく健康状態を把握することを目的としています。
また、その結果に対して医師や専門スタッフから説明や指導が行われます。必要に応じて、医療機関での精密検査や治療の勧奨が行われることもあります。
基本検査項目は、がんと生活習慣病に関するものが中心です。がんや生活習慣病は、初期は自覚症状がほとんど現れず、気づかずに放置すると進行して生活の質を大きく低下させ、生命にも危険を及ぼすためです。
検査項目の例として、日本人間ドック学会の一日ドック基本検査項目をご紹介します。
一日ドック基本検査項目(例)
- 身体計測(身長、体重、肥満度、BMI、腹囲)
- 生理(血圧測定、心電図、心拍数、眼底、眼圧、視力、聴力、呼吸機能)
- X線・超音波(胸部X線、上部消化管X線、腹部超音波)
- 生化学(総蛋白、アルブミン、クレアチニン、eGFR、尿酸、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、Non-HDLコレステロール、中性脂肪、総ビリルビン、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP)、ALP、血糖(空腹時)、HbA1c)
- 血液学(赤血球、白血球、血色素、ヘマトクリット、MCV、MCH、MCHC、血小板数)
- 血清学(CRP、血液型※、HBs抗原※)
- 尿(尿一般・沈渣)
- 便(潜血)
- 問診・診察(医療面接・医師診察)
- 判定・指導(結果説明・保健指導)
※の項目については、本人の申し出により省略することができます。
出典:「2020年度 一日ドック基本検査項目表(健保連人間ドック健診項目表)」P.1-2,公益社団法人日本人間ドック学会
より一部改変して作成
このように、人間ドックの検査項目は定期健診や特定健診と比べ、詳細な内容となっています。
また、人間ドックでは国が定めている5つの対策型がん検診(胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がん)の検査項目を実施しています。年齢制限などは設けられていません。
費用は全額自己負担ですが、居住する市町村、所属の健康保険協会または健康保険組合、契約している保険会社によっては、補助金もしくは助成金が受けられる場合があります。
オプション検査について
人間ドックでは基本コースに加えて、「全員に必要ではないものの、特定の性別や年代では行うことが望ましい検査」がオプション検査として選択可能です。オプション検査を選ぶ際には、次のことを考慮しましょう。
- 胃、脳、(女性の場合)子宮など、気になる部位の検査を追加する
- 身内に脳や心臓の病気になったり、がんになったりした人がいる場合は、脳ドッグや心臓ドック、がんの詳細な検査を選ぶ
- 年代に応じて適切な検査を追加する(年齢が上がるにつれて発症リスクが高まるがんや生活習慣病など)
続いて、人間ドックのオプション検査項目の例をご紹介します。
一日ドック オプション項目(例)
- 上部消化管内視鏡
- 乳房診察+マンモグラフィ
- 乳房診察+乳腺超音波
- 婦人科診察+子宮頚部細胞診
- PSA(prostate-specific antigen:前立腺特異抗原)
- HCV(hepatitis C virus:C型肝炎ウイルス)抗体
出典:「2020年度 一日ドック基本検査項目表(健保連人間ドック健診項目表)」P.2,公益社団法人日本人間ドック学会
より一部改変して作成
定期健康診断と人間ドックの比較
これまでご紹介してきた、定期健康診断と人間ドックの概要を表にまとめました。
定期健康診断 | 特定健診 | 人間ドック | |
義務 | 【定期健康診断】あり(事業者) | 【特定健診】あり(医療保険者) | 【人間ドック】なし(任意) |
対象年齢 | 【定期健康診断】特記なし(従業員) | 【特定健診】40~74歳 | 【人間ドック】20歳以上 |
検査項目 | 【定期健康診断】法律で定める検査を実施(医師の総合的な判断により一部省略可) | 【特定健診】基準で定められている検査を実施(健診対象者全員が受ける「基本的な項目」と医師が必要と判断した場合に受ける「詳細な健診の項目」) | 【人間ドック】学会が定める検査を実施(オプション検査も選択可) |
日程 | 【定期健康診断】1日以内 | 【特定健診】1日以内 | 【人間ドック】1日ドック(日帰り)や2日ドック、1泊ドック、3日以上ドックなど(施設によって異なる) |
目的 | 【定期健康診断】現在の健康状態の把握と生活習慣病の予防など | 【特定健診】生活習慣病の予防 | 【人間ドック】病気の早期発見など |
健康診断や人間ドックは受けるべき?
年間で、どれくらいの人が健康診断や人間ドックを受診しているのでしょうか。平成28年国民生活基礎調査(厚生労働省)では、健診・検診・人間ドック受診率は20~30代は約6割、40~60代は約7割でした。
やはり、特定健診・特定保健指導を含めた定期健診や、人間ドックは受診したほうがよいのでしょうか?
特定健診・特定保健指導を受けた人では、受けなかった人と比較して、3年間で体重、腹囲の減少がみられ、また薬物療法を開始した人の割合が少なかったことが報告されています。
人間ドックで受けられる5つのがん検診は、死亡率の低下が確認されているとして国が推奨している検診です。
これらのことから、定期健診や人間ドックを受診することにより、生活習慣病の予防やがんの早期発見が期待できるといえるのではないでしょうか。
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診 まず知っておきたいこと」
定期健康診断は年1回の受診が義務付けられています。健康診断を受けた上で人間ドックも受診するかどうかは、自分の健康状態や健康保険、利用できる補助金や助成制度との兼ね合いで判断するのがよいのではないでしょうか。
健康診断や人間ドックを、自分の健康状態を理解し生活習慣を振り返るよい機会として活用していきたいですね。