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ミネラル(無機物)とは何?体内での役割や摂取しやすい食材の選び方
2024/01/19
ミネラルとは“五大栄養素”の一つ
ミネラルは「無機質」とも呼ばれ、生体を構成する元素のうち「主要4元素」とよばれる酸素・炭素・水素・窒素以外の元素の総称です。糖質・脂質・タンパク質・ビタミンとともに人間の体の機能と構造の維持・調節に必要な「五大栄養素」の一つに含まれますが、ミネラルは体内で合成できないため、食事や飲料から摂取する必要があります。
主なミネラルは13種類
ミネラルには多くの種類がありますが、厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、次の13種類を取り上げて摂取基準を設けています。「食事摂取基準」は国民の健康を守るために必要なエネルギーと栄養素の摂取量の基準を示すものです。1969年に前身が策定され、おおむね5年ごとに改定されています。
ミネラルは、体内の存在量に応じて「多量ミネラル」と「微量ミネラル」に分類されます。
表1 主なミネラル
分類 | 種類 | 体内の分布 |
---|---|---|
多量ミネラル | ナトリウム(Na) | 血漿や組織液などの細胞外液に約50%が存在 |
カリウム(K) | ほとんどが細胞内に存在する | |
カルシウム(Ca) | 体内に最も多量に存在するミネラルで99%が骨や歯に存在 | |
マグネシウム(Mg) | 生体内に約25g存在し、約50~60%が骨、約27%が筋肉中にある | |
リン(P) | カルシウムに次いで多いミネラルですべての組織・細胞に存在 | |
微量ミネラル | 鉄(Fe) | 体内に約3g存在し、赤血球内を中心に広く分布 |
亜鉛(Zn) | 体内に約2g存在し、血液・筋肉・肝臓などに分布 | |
銅(Cu) | 体内に約80mg存在し、骨・筋肉・肝臓などに分布 | |
マンガン(Mn) | 体内に約15mg存在し、4分の1が骨にある | |
ヨウ素(I) | ヨードとも。体内に約15mg存在し主に甲状腺に含まれる | |
セレン(Se) | 体内に約13mg存在し、主に血液中に存在 | |
クロム(Cr) | 体内に約2mg存在し、広く分布 | |
モリブデン(Mo) | 体内に約9mg存在し、主に肝臓に含まれる |
上記に、硫黄(イオウ)と塩素、コバルトを加えた16種類を「必須ミネラル」と呼ぶこともあります。今後、摂取目安量などの研究が進めば食事摂取基準に加えられることがあるかもしれません。
それぞれのミネラルの役割と摂取方法
では、13種類のミネラルについて、役割や摂取上の注意、摂取量の目安、多く含まれている食材について解説していきます。なお、「日本人の栄養所要量」が「日本人の食事摂取基準」に名前を変えた2005年4月以降、所要量・必要量ではなく、推奨量や目標量等という基準が使われるようになっています。
表2 主なミネラルの役割・注意点・摂取量の目安・おすすめの食材
ミネラル名 | 役割 | 摂取量の目安 | おすすめの食材 |
---|---|---|---|
ナトリウム | カリウムとともに体内の水分バランスを調整したり、細胞外液の浸透圧を維持したりする 筋肉の収縮、神経の情報伝達にも関係している |
〈目標量〉(食塩相当量として) 18歳以上の男性で7.5g/日未満、女性で6.5g/日未満 |
・しょうゆ ・みそ ・即席めん ・ハム ・梅干し |
カリウム |
体液の浸透圧を調節して一定に保つ ナトリウムの排出を促す作用があり、塩分の摂りすぎを調節する |
〈目標量〉 18歳以上の男性で3,000mg/日以上、女性で2,600mg/日以上 |
・ドライフルーツ ・刻み昆布 ・干しひじき ・干しいも ・里芋 ・納豆 |
カルシウム | 骨や歯の材料になるほか、一部は血液や筋肉、神経の中で出血を予防したり、筋肉の興奮を抑えたりする |
《推奨量》 30~74歳の男性で750mg/日、女性で650mg/日 |
・乳製品 ・しらす干し ・小魚 ・干しえび ・ひじき ・ゴマ |
マグネシウム | タンパク質合成、筋肉や神経の機能、体温・血圧調整など、さまざまな生化学反応にかかわる酵素をサポート |
《推奨量》 30~64歳の男性で370mg/日、女性で290mg/日 |
・あおのり・わかめなどの海藻類 ・干しえび ・しらす干し ・きなこ ・油揚げ |
リン | 細胞膜や核酸の構成要素として細胞に存在し、骨や歯の発達に不可欠な成分 神経や筋肉の機能を正常に保つ役割も担う |
〈目安量〉 18歳以上の男性で1,000mg/日、女性で800mg/日 |
・かたくちいわし(田作り) ・干しえび ・たまご ・チーズ ・アーモンド |
鉄 | 血液中のヘモグロビンに多く存在し、酸素と結合して全身に運ぶ役割を担う 身体の成長、細胞の機能、一部のホルモンの合成に必要 |
《推奨量》 18~64歳の男性で7.5mg/日 月経のない18~64歳の女性で6.5mg/日 月経のある18~49歳の女性で10.5mg/日 月経のある50~64歳の女性で11.0mg/日 |
・レバー ・肉類 ・貝類 ・ひじき ・納豆 ・こまつな ・パセリ ・切り干し大根 |
亜鉛 |
胎児や乳児の発育に重要な役割を果たす 味覚を感じる細胞や免疫機能、細胞代謝、生殖機能にも関与 タンパク合成や細胞分裂にも必要 |
《推奨量》 18~64歳の男性で11mg/日、女性で8mg/日 |
・豚レバー ・牛肉(赤肉) ・牡蠣 ・かたくちいわし(田作り) ・うなぎ ・しらす干し |
銅 |
赤血球の形成を促し、体内酵素の正常な働きと骨の形成を助ける 動脈の弾力を保って血栓を予防する 免疫力をサポートする |
《推奨量》 18~74歳の男性で0.9mg/日、女性で0.7mg/日 |
・牛レバー ・ホタルイカ ・イイダコ ・干しえび ・ごま ・きな粉 |
マンガン |
酵素の活性化を促進する 骨の発達に関わるほか、糖脂質の代謝や皮膚の代謝などの酵素反応に関与する |
〈目安量〉 18歳以上の男性で4.0mg/日、女性で3.5mg/日 |
・緑茶・紅茶 ・あおのり ・干しえび ・アーモンド ・クローブやシナモンなどの香辛料 |
ヨウ素 | 細胞の新陳代謝や成長促進を担い、甲状腺ホルモンを合成する |
〈推奨量〉 18歳以上の男女130μg/日 |
・昆布 ・わかめ ・ひじき ・昆布茶 |
セレン | 酵素やタンパク質の一部を構成するミネラルで、体を守る作用を持つ |
《推奨量》 18歳以上の男性で30μg/日、女性で25μg/日 |
・かつお ・いわし ・あんこう(肝) ・たらこ ・たまご ・ゴマ |
クロム |
糖質や脂質の代謝を助け、インスリンの働きを活性化する 血中コレステロール値を下げ、中性脂肪を正常に保つ役割を担う |
〈目安量〉 18歳以上の男女で10µg/日 |
・ひじき ・わかめ ・あおのり ・バジル(粉) ・パセリ(乾) ・粉寒天 |
モリブデン |
肝臓や腎臓で有害物質を分解 鉄分の働きを助け、造血にも関わる |
《推奨量》 18~74歳の男性で30μg/日、女性で25μg/日 |
・きな粉 ・豆腐・納豆・いり豆などの大豆製品 ・らっかせい |
・推奨量:この値の付近かそれ以上摂取すれば、科学的に不足するリスクがほぼない量
・目安量:推奨量ほどの科学的根拠はないが、この値以上摂取すれば不足するリスクが非常に低い量
ミネラルの不足・摂りすぎには注意が必要
栄養素について学ぶ際は「不足」と「過剰」の両面をチェックする必要があります。特にミネラルは体内に微量しか存在しないため、種類によっては不足・過剰の影響が大きい場合があるのです。
●ミネラルが不足すると起こること
ミネラル(無機質)は人体内の元素の約4%を占め、骨などの組織や酵素の構成成分、体液中の電解質などとして重要な役割を果たしています。必要量はわずかですが、ミネラル不足は心身にさまざまな影響を与えるのです。
表3 ミネラル不足の影響
カルシウムの不足 |
骨が十分に成長せず、骨がもろくなる原因になる 特に閉経後の女性では骨粗鬆症になりやすくなる ※日本人の摂取量の平均値は、20歳以上の男女平均で498mg/日となっていて、かなりの不足傾向 |
---|---|
カリウムの不足 |
通常の食事で不足することは少ない 多量の発汗や嘔吐・下痢などにより排出されて欠乏すると、脱水症状、浸透圧調整機能の不調、食欲不振、だるさなどを起こすことがある ※日本人の摂取量の平均値は、20歳以上の男女平均で2,350mg/日で不足傾向 |
マグネシウムの不足 |
通常の食事で不足することは少ない 骨の形成を阻害することがある 気分の落ち込み、神経過敏、抑うつ感をまねくことがある ※日本人の摂取量の平均値は、20歳以上の男女平均で255mg/日とやや不足気味 |
鉄の不足 |
酸素の供給が不十分な状態になり、頭痛や倦怠感、息切れ、集中力低下、食欲不振などを引き起こすことがある ※特に妊婦、経血量が多い女性などは鉄が不足する可能性が高い ※日本人の摂取量の平均値は、月経のある女性で不足気味 |
亜鉛の不足 |
味覚の異常、食欲不振などを誘発する 男性の性腺機能低下を引き起こすことがある 目や皮膚の異常などにつながることがある |
クロムの不足 | 耐糖能異常や成長障害、タンパク質の代謝異常などが起こることがある |
●ミネラルの摂りすぎで起こること
ミネラルは多く摂ればよい訳ではありません。過剰摂取に注意すべきミネラルもあります。
表4 ミネラルの過剰摂取の影響
ナトリウムの過剰摂取 |
むくみや血圧の上昇、体調不良をまねくことがある ※食塩の過剰摂取がナトリウム過剰につながる |
---|---|
カルシウムの過剰摂取 |
通常の食生活で過剰摂取の心配は少ない サプリメントや医薬品により過剰摂取になると、亜鉛や鉄など、ほかのミネラルの吸収を抑制することがある ⇒耐容上限量の設定あり:18歳以上の男女ともに2,500mg/日 |
マグネシウムの過剰摂取 |
通常の食事で過剰摂取の心配は少ない サプリメントなどで過剰に摂ると、下痢を起こす可能性がある |
リンの過剰摂取 |
長期にわたって過剰摂取を続けると、腎臓機能やホルモン分泌に影響を及ぼすことがある カルシウムの吸収を妨げることがある ※インスタント食品や加工食品に多く含まれ、過剰に摂取しがち ⇒耐容上限量の設定あり:18歳以上の男女ともに3,000mg/日 |
鉄の過剰摂取 |
健康な成人で過剰摂取になる心配は少ない サプリメントや医薬品などで一度に多量摂取すると便秘や胃のムカつき、腹痛などにつながりかねないので要注意 ⇒耐容上限量の設定あり:18歳以上の男性で50mg/日、女性で40mg/日 |
亜鉛の過剰摂取 |
通常の食生活で過剰摂取の心配は少ない サプリメントなどで亜鉛を摂りすぎると吐き気や下痢などを誘発するおそれがある ⇒耐容上限量の設定あり:18~29歳の男性で40mg/日、30~64歳の男性で45mg/日、18~64歳の女性で35mg/日 |
ヨウ素の過剰摂取 | 甲状腺機能の低下などがみられることがある ⇒耐容上限量の設定あり:18歳以上の男女ともに3,000μg/日 |
セレンの過剰摂取 |
毒性が強く、サプリメントなどでの安易な摂取は避けるのが賢明 ⇒耐容上限量の設定あり:18~74歳の男性で450μg/日、女性で350μg/日 |
モリブデンの過剰摂取 |
銅の吸収を阻害するおそれがある ⇒耐容上限量の設定あり:18歳以上の男性で600㎍/日、女性で500㎍/日 |
ミネラルは、不足しても過剰に摂取しても心身に影響を及ぼすことがあります。たとえばカルシウムの過剰摂取が鉄の吸収を抑制するように、お互いに影響し合うこともあるのです。
「食事摂取基準」の指標(推奨量・目安量など)を意識し、栄養バランスのよい食事を心がけて、バランスよくミネラルを摂取することが重要になります。サプリメントで補う場合は、摂取量に注意が必要です。
*サプリメント摂取時の注意点
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」には、耐容上限量が設定されているものがあります。超してはいけない量の指標として、過剰摂取による健康被害の回避を目的として設定されているのです。一般的な食生活では耐容上限量を超える心配はあまりありませんが、サプリメントを常用する場合には過剰摂取にも注意が必要になります。 またサプリメントと薬を併用すると、効果が弱まったり副作用が強くなったりするケースもあるため、事前に医師に相談することが大切です。
ミネラルを上手に摂取するコツ
ミネラルについて、ご理解できたでしょうか。普段どおりの食事で不足する心配のないミネラルも多いですが、たとえば通常は不足しにくいとされるカリウムで摂取不足の傾向が指摘されるなど、安心はできません。偏りがなくバランスのよい食事が大切になります。
表2の「おすすめの食材」には、海藻類や大豆製品、しらす干し、干しひじきなどが何度も登場することがおわかりかと存じます。これらの食材はミネラルを豊富に含むのです。ほかにもゴマやナッツ類、香辛料もミネラルの宝庫になります。普段の食事に少しずつ取り入れるのがポイントです。
また、たとえば鉄はビタミンCと一緒に摂取すると吸収率が上がるとされています。ビタミンだけでなくミネラルも豊富に含む緑黄色野菜もメニューに加えるのがおすすめです。上手にバランスよくミネラルを摂取しましょう。