γ-GTP 、AST(GOT)、ALT(GPT)とは？　肝機能の数値と変化のメカニズム

目次

• 肝臓の働き（肝機能）について
• γ-GTP 、AST（GOT）、ALT（GPT）とは？
• 秋ウコンに含まれるクルクミンとビサクロン
• クルクミンとビサクロンが健康な人の肝機能の指標である酵素値の一部（※）を改善する作用メカニズム
• さいごに

▼肝臓の働き（肝機能）について

まずは肝臓の働きについて簡単にご紹介します。
肝臓は、体に必要なさまざまな物質を作ったり、有害な物質を解毒・排泄したりする働きをしています。そのため、肝臓の細胞の中にはこうした働きを助けるさまざまな酵素が存在しています。γ-GTPやAST（GOT）、ALT（GPT）はそうした酵素のひとつなのです。
何らかの原因で肝臓の細胞がダメージを受けたり、肝臓からの胆汁の通り道である胆道がダメージを受けたりすると、これらの酵素が血液中に流れて出てしまい、血中の酵素値が上昇します。つまり、健康診断や人間ドックなどの血液検査でのγ-GTP 、AST（GOT）、ALT（GPT）の値によって肝臓の健康状態を調べることができるのです。

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▼γ-GTP 、AST（GOT）、ALT（GPT）とは？

それでは続いて、γ-GTP 、AST（GOT）、ALT（GPT）それぞれについて、もう少し詳しく見てみましょう。
血液中のγ-GTP、AST（GOT）、ALT（GPT）の値は、上記以外にも、バランスの偏った食事、飲酒、運動不足など生活習慣の影響でも上昇します。それぞれの数値だけでなく、AST（GOT）、ALT（GPT）のどちらが優位かで、肝臓の炎症の程度などがわかります。
肝臓の状態を調べるためには血液検査が重要です。

γ-GTPとは？

γ-GTP（γ-グルタミルトランスペプチダーゼ）は、解毒作用にかかわるグルタチオンの分解や生成に関与する酵素です（※1）。腎臓に最も多く、続いて膵臓、肝臓の順に多く存在します。しかし、血液検査の値に影響するのは、ほとんどが肝臓または胆道（胆管・胆のう）のダメージによると考えられています（※2）。そのほか、アルコールや薬剤にも影響を受けます（※1）。

AST（GOT）とは？

AST（アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ）は、GOT（グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミラーゼ）とも呼ばれ、アミノ酸の合成や分解にかかわる酵素のひとつです（※1）。
肝臓のほか、骨格筋や心筋、腎臓、赤血球などにも存在しているため、肝障害以外の原因により上昇することもあります（※1）。

ALT（GPT）とは？

ALT（アラニンアミノトランスフェラーゼ）は、GPT（グルタミン酸ピルビン酸トランスアミラーゼ）とも呼ばれています。主に肝臓に存在するため、肝臓の状態をよく反映すると考えられています（※1）。

γ-GTP 、AST（GOT）、ALT（GPT）の基準範囲は？

γ-GTP 、AST（GOT）、ALT（GPT）、の基準範囲は下の表のとおりです。ただし、基準範囲外の場合でも、必ずしも病気であるとは限りません。たとえばAST（GOT）は激しい運動などによっても上昇することがあります。

	基準範囲
γ-GTP	50以下
AST	30以下
ALT	30以下

日本人間ドック学会：検査表の見方「血液検査」
https://www.ningen-dock.jp/public/method#blood

秋ウコンに含まれるクルクミンとビサクロン

注目を浴びているのが、ウコンに含まれるクルクミンとビサクロンです。ウコンは秋ウコン、春ウコン、紫ウコンに大きくわけられます。秋ウコンには春ウコンに比べてクルクミンが多く含まれているといわれています。ビサクロンは、秋ウコンに微量に含まれる希少成分です。
クルクミンとビサクロンは、健康な人において、肝機能酵素値の改善に役立つ作用のあることが報告されています（※3,4）。

クルクミンとビサクロンが健康な人の肝機能の指標である酵素値の一部（※）を改善する作用メカニズム

※健康診断で測定できるγ-GTP、AST（GOT）、ALT（GPT）

クルクミンは、酸化ストレスや炎症を抑えること（※5）、肝臓の炎症を抑制すること（※6）が報告されています。また、脂肪の高い食事によって肝臓の酸化ストレスが引き起こされますが、クルクミンは、ストレスサリドロシドという成分と組み合わせることで、その酸化ストレスを抑制して血中のγ-GTP、AST（GOT）、ALT（GPT）を低下させること（※7）が示されています。
ビサクロンは、抗炎症作用を有すること（※8）や、酸化ストレスと炎症を抑えることで、AST とALTの低下をもたらすこと（※9）が示されています。
また、秋ウコンエキスに含まれるクルクミンおよびビサクロンは、肝細胞を保護する作用があることが、細胞を使った試験で示されています（※10）。
これらの結果から、クルクミンとビサクロンは、肝細胞を保護することで、肝細胞のダメージを抑え、健康な人の血液中のγ-GTP、 AST、ALTを改善します。なお、クルクミンとビサクロンは、肝機能酵素値の異常を改善するものではありません。

▼さいごに

肝臓は、病気になっても症状があらわれにくいことから、「沈黙の臓器」と呼ばれています。そのため、健康な人でも、健康診断や人間ドックなどで定期的に血液検査を行って肝臓の状態を確認することが大切です。

(※1) 井津井康浩ほか：採血データの読み方～データを深読みすると肝臓がまるみえに～．内科119(6): 1083-1088, 2017
(※2) 渡邊綱正：肝疾患を疑ったとき、どの検査値に注目する？．レジデントノート2018;20(10)1644-1652
(※3）Jpn Pharmacol Ther （薬理と治療） vol.44 No.4 2016 p.593-602
(※4) Jpn Pharmacol Ther （薬理と治療） vol.45 No.2 2017 p.243-252
(※5) V. P. Menon and A. R. Sudheer, “Antioxidant and anti-inflammatory properties of curcumin,” Advances in Experimental Medicine and Biology, vol. 595, pp. 105–125, 2007.
(※6）I. A. Leclercq, G. C. Farrell, C. Sempoux, A. dela Peña, and Y. Horsmans, “Curcumin inhibits NF-kappaB activation and reduces the severity of experimental steatohepatitis in mice,” Journal of Hepatology, vol. 41, no. 6, pp. 926–934, 2004.
(※7）L. Hong-Shan, Y. Hao, and H. Zhe-Yun, “Salidroside and Curcumin Formula Prevents Liver Injury in Nonalcoholic Fatty Liver Disease in Rats,” Annals of Hepatology, vol. 17, no. 5, pp. 769–778, 2018.
(※8）D. I. Sun, I. T. Nizamutdinova, Y. M. Kim, X. F. Cai, J. J. Lee, S. S. Kang, Y. S. Kim, K. M. Kang, G. Y. Chai, K. C. Chang, and H. J. Kim,“Bisacurone inhibits adhesion of inflammatory monocytes or cancer cells to endothelial cells through down-regulation of VCAM-1 expression,” International Immunopharmacology, vol. 8, pp. 1272–1281, 2008
(※9）R. Uchio, Y. Higashi, Y. Kohama, K. Kawasaki, T. Hirao, K. Muroyama, and S. Murosaki, “A hot water extract of turmeric (Curcuma longa) suppresses acute ethanol-induced liver injury in mice by inhibiting hepatic oxidative stress and inflammatory cytokine production,” Journal of Nutritional Science, 2017 Jan 12;6:e3.
(※10）C. Megumi, K. Muroyama, H. Sasako, and N. Tsuge, “Preventive Activity of ar-Turmerone and Bisacurone Isolated from Turmeric Extract Against Ethanol-induced Hepatocyte Injury,” Food Science and Technology Research, Vol. 23, pp. 275–281, 2017.